捨てられていくはずの骨が生まれ変わる—鹿骨アクセサリーブランド「hai」岡本梨奈


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岡本梨奈

滋賀県高島市出身。京都精華大学在学中に狩猟免許を取得。2013年より鹿の骨を素材としたアクセサリーブランド「hai」をスタート。

 

「狸を拾ったので、すみませんが30分遅れます」

取材前に届いた一通のメール。その送り主が、今回お話を伺う岡本梨奈さん。京都の大学を卒業後、滋賀県高島市で鹿の骨を素材にしたアクセサリーづくりをしています。大学で絵を学んでいた彼女が、本来ならば捨てられるはずの鹿の骨に魅力を感じたきっかけとは一体何だったのでしょうか。

 

※皮なめし講座の様子を写した写真に、なめす前のハクビシンが少し写りこんでいます。苦手な方はご注意ください。

 

“捨てられていく鹿の骨を見て、「彫ったら面白いんじゃないか」と思ったのがきっかけ”

—今つけていらっしゃるアクセサリーもご自身で作られたものですよね。

 

岡本 はい。ネックレスは鹿の骨、ピアスはイタチの手でつくりました。

 

―このような動物の骨や角を使用したアクセサリーをつくるようになったきっかけを教えてください。

 

岡本 大学4年生で狩猟免許を取得して、卒業後はアルバイトをしながら絵を描くという生活を続けていたのですが、「環境を変えたい」という思いで京都から地元である滋賀県高島市に戻りました。狩猟をしやすい場所であることと、家賃が安いことが決め手でした。そこでご縁があり鹿の解体所で働かせてもらうことになりました。肉を捌く作業をひたすらしていたら、毎回肉より多い量の骨が出てくるんです。捨てられていく骨を見て、「これ何かに使えへんのかな?」「彫ったら面白いんちゃうかな」という思いが沸いてきました。高島市は工芸作家さんが多いことから、もともと自分のものづくりで食べていきたいという思いはありましたね。

 

—捨てられていく骨を彫るという発想は、なかなか生まれるものではないですよね。

 

岡本 骨を彫る前に線を書くので、基本的には絵を描く作業とあまり変わらないですね。そこは違和感なく取り組むことができました。

 

“肉を食べて終わりなく、隅々まで使えることを知って欲しい”

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(写真上)岡本さんが取材につけていた、イタチの手のピアス。

(写真下)鹿の骨でつくられたネックレス。石のようなツルリとした手触り。

 

—作品へのこだわりは。

 

岡本 余計な着色はしないことです。骨をとる前に皮を剥いで煮込む作業をするのですが、煮込み具合によって色味が変わるのが面白い。長めに水を浸すと油が染みて今日つけているアクセサリーの骨の色になったりとか、サーッと水に流すだけだと真っ白い色になったり。制作を初めてまだ1年半程なので、色味はまだまだ勉強中です。

 

—岡本さんは手作り市などにもよく出店されていますが、お客さんの作品に対する反応はいかがですか。

 

岡本 イベントによって反応は異なります。狩猟に興味がある人が集まる所では、反応はいいですね。街のお嬢さんが来るような商業施設での出店するときは「鹿の骨からつくったことを伝えていいのかな……?」と悩んでしまうときもあります(笑)。骨を使ったアクセサリーをつくる方は他にいないので、「隅々まで使えるんだ、無駄にならないんだ」ということを感じてもらえたら嬉しいです。

 

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Deまちにて岡本さん(写真右)主催で行われた皮なめしのワークショプの様子。

 

—狩猟に興味を持ったきっかけは何でしたか。

 

岡本 狩猟は、自分で食べるものを自分で獲るという究極の自給自足ですよね。免許を取った当時は周りに狩猟をしている人がいなかったので、自分で調べて取りました。実際に狩りに出たのは取得してから2年後になりましたが、実際やってみるとめっちゃ楽しい! この足跡はどの動物で、ここを通って、ここで餌を食べて……と足跡を追いかけていくとわかっていくので面白いです。

 

—今は岡本さんのように狩猟に興味のある女性が増えてきている状況についてどのように思いますか。

 

岡本さん 自分ひとりではないと、心細さがなくなりました。狩猟免許の試験情報がウェブサイトで得やすくなったり、動画視聴サイトでも罠の作り方を解説した動画がアップされたりと状況が変わってきていると感じます。ただ、私は自分の考えに沿った獲り方を続けていきたいと考えており、鹿が増えていて環境に被害が出るので若いハンターを増やさなければいけないという風にはあまり考えていません。むやみに鹿を獲ってしまう姿勢でいるより、もう少し丁寧に向き合っていかないとおかしなことになるんじゃないでしょうか。

 

—これからはどのような活動をしていきたいですか。

 

岡本 最近彫金を始めたので、骨と彫金を組み合わせた作品もつくっていきたいです。また、2015年10月に狩猟を題材にしたエッセイ漫画を出版予定なので、その制作活動も頑張ります。

 

 

鹿骨アクセサリー「hai」

https://www.facebook.com/hai.shika

 

(インタビュー:日下千夏 テキスト:川上ひろこ)


2015-06-04 | Posted in インタビューComments Closed 

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